第71回紅白歌合戦出場者感想。

 毎年恒例の紅白初出場者の予想を今年はしなかったのですが、一年に一度くらいは生存報告も兼ねて感想でも書いておこうかと思います。コロナの影響でエンタメ業界が(に限らず多方面の職種にいえることですが)これといったトピックも少なく、参考になる指標がなさすぎた点と、ごく個人的には史上初めての無観客開催ということもあり、テンションだだ下がりでした。ただ逆に言えば、話題が少なかったからこそ、選出に選者のセンスが問われるということでもあります。

 

初出場の方々


東京事変
櫻坂46
NiziU
JUJU
BABYMETAL
milet


SixTONES
Snow Man
瑛人

特別枠
GReeeeN

 

 とりあえず、毎年のように推していたBABYMETALの初出場が決まりました。そもそも初出場に立ち会いたくて毎年1000枚もの往復ハガキを出し始めたというのに、よりにもよって観れないことが確定している今年に限って初出場するとはッ!!!まぁとても楽しませていただいたので無駄だったというつもりもないですが、なんというか脱力しました。

 

 巷でもいわれていることですが、まず最初に思ったのは白のジャニーズと赤のSONYが多すぎということでしょうか。まぁぶっちゃけ今年に限っていえば、この2社の協力がなくては番組が成り立たないレベルなので致し方ない気もします。

 

 去年の段階でジャニーズに関していえば、ほぼファンの支持の母数が多い順になったので選考のメンツとして妥当ではあります。具体的に言うと、キンプリ以外はドームツアーが出来るグループが当選して、アリーナツアーのグループが落選している、ということです。枠とか一切考えずにいえば嵐、関ジャニ∞、Hey!Say!JUMP、キスマイは観客動員数のトップ10に入っていますし、キンプリを外すというチョイスは、番組的にも事務所的にも世間的にもありえないと思うので、結果妥当だよねという話。それに加えて、SixTONESSnowManは今年数少ないセールス的なトピックを持っているグループなのでこれも妥当。

 SONY系は今年のトピックのうち、鬼滅の刃、YOASOBIの「夜に駆ける」、NiziU、とマストの存在をいくつも抱えており、こちらもちょっと忖度せずにはいられません。(YOASOBIについては後述)これにくわえて米津玄師にも説得してみるとか言われたらバーターでmilet一人くらい、自分なら選びます(笑)

 

 一方でこの「枠」という概念自体、1970年代の紅白で渡辺プロダクション全盛時代に、渡辺プロダクション所属の歌手が膨張した状況に、ほかの芸能プロが苦情をいれたことが原因だといわれており、現状がこれに近づいているなぁという気はします。ただ違うことがあるとすると、当時の紅白はまさに国民的行事だったのに対し、現状はそうではなく、存在意義を維持するためにはなりふり構っていられない気もします。

 

 

 次に演歌・歌謡枠の2減について。丘みどりと島津亜矢という。キャリアでいうと下から若い二人が落選して、新規の出場者もいないということで、演歌・歌謡のファン層からかなり強い否定的な意見が散見されますがこれがどうか考えてみます。まず前提として、現在の演歌歌謡ジャンルの全体像を把握しておきましょう。というのも巷の意見をみていると、偏見だと思えるような見当違いのものが多いように感じます。まずテンプレ的な意見を2つ。

 

1今や高齢者世代でも比較的若い人だとニューミュージックの世代であり、演歌歌謡ジャンルは聴かない。消えゆくのは自然の流れだ。
2最近の紅白歌合戦は若い人の音楽ばかり取り上げておりつまらない。中高年は演歌歌謡を聴きたい人が多い。

 

1は演歌歌謡ジャンルをよく知らない客層の、2は演歌歌謡ジャンルのファン層によくあるポジショントークなのですが、これは果たして正しいのかというお話です。演歌歌謡ジャンルのもともとのファンの核となる層は、確かに現在では後期高齢者に当たる人達なのですが、一方で、今現在の流行の音楽よりは唱歌に近いジャンルで、がちゃがちゃ聴き取りにくい流行の音楽よりもこちらのほうを好む方は、それ以下の年代でも一定数います。おそらく100人いたら多くて2~3人くらいだと思います。もし自分の周囲には一人もいないという人がいても全然不思議ではありません。ただし10代から60代まで分布は広く、マーケットとしては興味のない方が想像するよりもはるかに大きいです。また、局地的には昭和歌謡のファン層は拡大傾向にあり、30代~40代よりは10代~20代の方が若干多いかなという気さえします。新人歌手も2000年代よりはデビューの人数が増えており、ここからも一時期の低迷期を脱している印象が見受けられます。今後マジョリティとしての流行音楽から消えゆくのは自然の流れだというのは確かにそのとおりで、ニッチ化が進んだ時にどのようになるのかはまだわかりませんが、というよりも、それは今後の普及活動次第だという気もしますが、個人的には現在の民謡・浪曲の類ほどは萎まないのではないかと考えています。これも正確には間違っていて、これらも歌謡曲に完全に内包されるべきものというのが正しいところでしょうか。演歌歌謡ジャンルはファンの方が思うよりはニッチ化が進んでおり、ファンでない方が思うよりは廃れていないというのが現在地かと思います。


 紅白歌合戦の選考で考えた場合、一言に演歌歌謡歌手といっても、五木ひろし石川さゆりなどは大衆向けの歌手として選ばれているが三山ひろし、純烈などは演歌歌謡ジャンルの人気歌手として選ばれているということになります。これを踏まえたうえで丘みどりと島津亜矢の落選が妥当なのかという話に戻るのですが、この両者も若干ポジションが異なるかなと思います。丘みどりは若手人気演歌歌謡歌手で差し支えないと思いますが、島津亜矢は徳永英明と入れ替わりで入ったカバー歌手という位置づけが正解に近いのではないかというのが私見です。とすると、純粋に演歌歌謡ジャンルで選考され選出されていた歌手は山内恵介、三山ひろし、純烈、丘みどりの4者であり、今回丘みどりが落選して3枠になったというのが正しいかと思います。(これより上の年代になると、氷川きよしは大衆歌手といえると思いますが、水森かおりは微妙)

 演歌歌謡ジャンルのマーケットの大きさからいって、バンド枠と比較した場合に、個人的に4枠はちょっと多いかなという感じがするので、今回の2減に関しては許容範囲内かなあというのが個人的な結論となります。ただ一つ問題点があるとすると、バンド枠は結構入れ替わり立ち替わりで多様性がありますが、演歌歌謡枠の出演者は固定されていることです。演歌歌謡ジャンルのファンフォーラムを除くと、特に要望が多いのが、竹島宏、市川由紀乃福田こうへいあたりだと思いますが、福田こうへいについては、別の思惑も働いていそうな気もしますが、今後真田ナオキ、辰巳ゆうとなど他にも今後声が大きくなってゆくであろう方が何人かいます。今後はもうちょっと流動性を持たせていったほうがよいのではないかという気がします。「持ち回り」といってしまうと表現がわるいかもしれませんが。

 

 次にYOASOBIについて。巷でもよく話題に上がっていますが、本人たちに出場の意思があり、世間的にもマストの存在かと思っていたので、不選出は私も意外でした。追加出場の可能性が言われるのは当然かと思います。今回気になるのは、YOUTUBEなどの動画配信サイトを主戦場とする歌手が一組も選出されていないことです。歌ってみた枠とかいうものが、かっちりとあるわけではないのですが、出場者一覧を見ているとここがもっとも過小評価されていると感じます。

 

そらる、まふまふ、浦島坂田船、すとぷり

ヨルシカ、ずっと真夜中でいいのに

Eve

美波、Reol

 

 YOASOBIの追加発表と合わせて、ここら辺の何組かがネット発信の新世代シンガーとして企画枠として出演しないかなあと割と本気で思ってたり。妄想に近い予想ですが、そろそろメジャー級といえる人も多数いますし、ひとまとめにして大衆に発信するにはよい時期だと思うのですが。と、去年も同じことを書いていてちょっと苦笑してしまいました。tiktokの流行りの素材として認知されている人も多く、瑛人と何が違うの?というと説明が難しいですが、自分の中では区別しています。好きな人なら何となくわかってもらえると思います。


 また、YOUTUBE界隈では新興勢力としてVtuberの存在感も上がっていると感じます。キズナアイが認知された後乱立され、シーンとしては局所的に盛り上がっているものの核となるキャラクターが存在しない状況でしたが、とりあえず「ホロライブプロダクション」か「にじさんじ」をピックアップしておけば無難じゃないかと思える程度には、アイコン化したように思います。とはいえ、上に挙げた人たちとくらべると、もう一息欲しい感はあるので、来年以降注目ということで。

 

 女性アイドルに関して。AKB48が不選出になったのが象徴的だともいえますが、ローカルアイドルブームは去り、地下アイドル文化も衰退しました。BiSHを去年は候補に挙げていましたが、コロナ禍を差っ引いても停滞感が強い気がします。クラウドファンディングのライブ企画でごたごたしていたのは覚えていますが、顛末までは追っていません。短期間に姉妹グループを乱立しすぎたのはちょっと影響があるのかなといったところです。BiSHはこれに該当するわけではありませんが、結局多くのグループアイドルが大規模アリーナの単発公演が結果的にゴールになってしまい、そこからスターダムに駆け上がっていくグループは数えるほどしかありませんでした。特にファンだったわけではないですが、sora tob sakanaあたりの解散は個人的にも思うところがありました。現状で明るい希望を持って期待できるグループは、指原莉乃プロデュースのイコールラブとノットイコールミーだけかなという気がします。

 

 CDが大衆人気の指標にならなくなったと言われて久しいですが、ストリーミングやYOUTUBEの再生数が偏ってないかといわれるとやはりそんなことはなく、ここ近年しばらくの間は難しい選考が続くと思います。